会長挨拶

日本アドラー心理学会は、初代会長である故野田俊作によって、1984年2月にアドラー心理学の研究と啓発を目的に設立いたしました。同年8月には大阪大学で第1回総会学術集会を開催いたしました。

野田俊作先生は、1982年にシカゴ・アルフレッド・アドラー研究所での留学と同時にバーナード・シャルマン先生のもとで学ばれました。その後、日本にアドラー心理学を持ち帰り、今日の学会の礎を築きました。

1985年には、国際アドラー心理学会(International Association of Individual Psychology)に加入し、日本で唯一の公認団体であります。

2023年10月には、記念となる第40回総会学術集会を広島県で開催することができました。これまで支えてくださった諸先輩方に感謝申し上げます。

設立当初より引き継がれている3つの基本路線

  1. アドラー心理学の日常生活での実践重視
  2. 非専門家による地域活動の重視
  3. アドラー心理学の基礎理論の尊重

当会の特徴は、専門家、非専門家の区別なく、医療、福祉、教育、家庭、企業など様々な現場領域で活躍している会員がともにアドラー心理学を学んでいることにあります。

私たちは、アルフレッド・アドラーがそうだったように子育てに重点を置いています。2022年にアドラー心理学に基づく子育て学習プログラム・EOLECT(エオレクト)を新しく開発しました。

EOLECTは、アドラー心理学による子育てと家族のありようを学び、練習するためのプログラムです。このプログラムでは、子育てを通じて、子どもと親(養育者)の両方に共同体感覚が育まれることをめざしています。子育ては、日々のていねいな実践の積み重ねが必要です。EOLECTファシリテーターが、そのお手伝いをいたします。

また、アドラー心理学の学習と普及のため、今後もさまざまな講座を開催していく予定です。それに伴い、講師や有資格者の人材育成に努めたいと思います。

2022年の学術集会で、国際アドラー心理学会会長のマリーナ・ブルフシュテイン博士が日本のアドレリアンに対し、「よく統制された研究と学習」、「生涯にわたる完璧を目指す努力」、「困難から迅速に回復して克服する力」と表現してくれました。

さらに、「親愛なる日本のアドレリアンのみなさま、これからあなたはどうしようと思われますか?」「21世紀のアドラー心理学のムーブメントの中で、個人として、集団として、どのような声を上げていきたいと思いますか?」「どんな貢献をする準備が整っていますか?」と問いかけがありました。

この問いかけに返答し、学会の未来に向かって進んでいくために、みなさまとともにアドラー心理学を学び、話し合い、協力して運営していきたいと思います。そして、私たちの活動が世界平和の一助になれば幸いです。

2024年8月1日
一般社団法人 日本アドラー心理学会
会長 樋澤律子